六本木、高身長の女、9

1つのドアが閉まれば、もう1つのドアが必ず開く。

それはバランスをとるための、自然の法則なのだ。

Bryan Adams(musician/1959.11.5〜)

6月某日、渋谷。

この日は暑くもなく、寒くもなく、スト(※ストリートナンパ)に適した日といえた。仲間が横浜の祭りでピックアップをする中、kitagawaはやらなければいけない山ほどの仕事と向き合っていた。横浜にはいきたかったが、サラリーマンの身分。決して本業をないがしろにはしてはいけない。家に帰宅するころには時計の針はすでに22時を指していた。シャワーを浴びて私服に着替え、外出の準備を済ませた。以前ピックアップ(※英語圏でのナンパの意)した美容系専門学生とのアポが23時からあったからだ。彼女からのメールが22:50程に着信し、既に渋谷に到着していることは分かっていた。

何処にいればいい?」

質問に対し、スタバにいることを促した。仮に外で待っていた場合、コンペティターからの奪還のリスクに晒されるためだ。そのリスクを限りなく0にできるほどの彼女との信頼関係はあるはずもなかった。KITAGAWAは彼女と一週間程前に路上で出会い、数通のメールのやり取りを交わしただけだった。待ち合わせ場所に行くと、ちょうど彼女から着信があった。

センター街側の出口」

そう一言告げると、しばらくして目の前に彼女は現れた。高身長とロングヘアーのせいか、ボーダーのワンピースがとても似合っていた。

「いこう!」

そういいながら、彼女の先を歩いた。KITAGAWAはいつも、歩きながら相手との会話のツボを探る。彼女は他愛ない話でもすぐに笑った。さらに、待ち合わせ時間の性質上、イージーゲームは目に見えていた。ドン・キホーテでオレンジジュースとウォッカ、ミックスナッツを買い、KITAGAWAの家へ向かう。彼女の好きなお酒はスクリュードライバー。KITAGAWAはそれを以前の会話のやりとりで引き出し、記憶していた。家へ着くとすぐグラスを2つ用意し、アイスペールとアイストング、マドラーを準備した。冷やしておいたシャンパンでささやかなおもてなしをすると、彼女は想像以上に喜んでいた。テレビをぼんやりと眺めながら、しばらく会話を交わした。

「眠いね」

彼女が急に言った。

「俺も。寝ようか。」

そう告げながら、KITAGAWAはバスローブに着替え、彼女の分のバスローブも差し出した。(バスローブ・ルーティーン)kitagawaがバスローブを準備しているのは、セクの為だ。ズボンやショーパンの場合、すぐ下に触れることができない。さらに、寝るために着替えるという行為によってストッキング等邪魔なものをあらかじめ排除できるからだ。ベッドに入るとすぐ、腕枕からの軽めのギラ。(※セクに向けてアプローチをする行為)多少のグダもあったが、すぐ濡れた彼女に対し

「やめる?」

と問い掛けた。

「やめないで…」

形式的なグダだった。そのままセクをした。ことが終わりシャワーを浴びた。シャワーからあがる頃には、彼女は眠りについていた。

なんともいえない虚無感に襲われながら、kitagawaも眠りについた。そのとき、その虚無感の正体が一体なんなのか知る由もなかったし、知ろうとも思わなかった——。


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