渋谷、美容部員、8。

私は何事も最悪の事態を想定することから始める。

—ナポレオン・ボナパルト(フランスの皇帝/ 1769~1821)

6月某日、渋谷—。

この日は梅雨の空模様の合間で、わずかに晴れた日だった。kitagawaはいつもと変わらない渋谷に、いつもと同じように繰り出していた。まずは、身体をピックアップモードに切り替えるため、声掛けを意識的に多めに行う。このタイミングでは、7以上のしばりをいったんは外し、スト値6まで選択の枠を広げる。いつものアップのルーティーンだ。このルーティーンが済むと、kitagawaはその日にベストな雰囲気を作り出すことができる。

1件1件、丁寧に声をかける。オープン率は悪くない。歩く女子には「直接法運命系オープナー」を、止まっている女子には「間接法待ち合わせオープナー」を主軸に攻めていった。16件の声掛けが済み、4番ゲ。内訳は8、7、6、6。悪くない。

17件目。駅の方へ向かう帰宅途中の女子。直接法運命系オープナーを選択。オープン。女友達と2人で飲んでいたが、友人の彼氏が突然来たせいで友人は早めに彼氏と2人で帰宅してしまったらしい。共感。類似性の法則。アンダー・ザ・ドッグ効果。

「お互いこんな日もあるよね…まだ飲み足りなくない?よかったらちょっと軽く一杯飲みにでも行こう。美味しいスパニッシュ&オイスターバーを最近教えて貰ったんだよね。」

一瞬グダがあったが、自信満々の笑みと押しで連れ出し。歩きながら、お互いのことを話す。向こうからの質問がやたら多い。

「あなた、何者なの?」「ねぇ、これってナンパなの?」

リアルを織り交ぜつつ、様子を伺いながらファジーな返答を積み重ねる。彼氏何人いるのルーティーンからの恋愛遍歴引き出しルーティーン。向こうの理想像を模索しながら会話を進めていく。今までに付き合った人数は4人。元彼とは遠距離になり3月に別れてしまったらしい。某外資系化粧品メーカーの美容部員、スト値8。黒髪のロングヘアをアップスタイルでまとめあげ、はっきりとした目鼻立ちのせいか、アイメイクがとても際立っていた。そうこうしている内に、バーに到着。

「リモンチェッロを二つ。それと牡蠣のセットでお願いします。」

彼女の大体の好みは歩いている中で把握したつもりだった。

「美味しい!!」

彼女から笑みがこぼれた。反応は上々。会話のテンポや、タバコに火をつけるタイミングも、どことなくマイペースだ。kitagawaは違和感を覚えた。彼女は不思議ちゃんだった。得意なタイプとは正直言えなかった。果たして攻略できるのか?このとき、あるミス◯ルの歌詞の一節が頭に浮かんだ。

「高ければ高い壁の方が、登ったとき気持ちいいもんな—。」

そうだ。その通りだ。kitagawaは気合いを入れるためにトイレにたった。鏡を見て自分の表情を確かめ、精神を集中する。何百回と同じことを繰り返してきたんだ。大丈夫だ、負ける要素はない。そう自分の心に言い聞かせた。一抹の不安な心理が、ネガティブな方向へことを進めることになる。女性の勘と洞察力は男性が持っているそれの比ではない。魅力的な男性を演じきるのだ。席に戻ると、わずかに酔っているような表情の彼女がそこにはいた。またトークを再開する。溢れ出てくる話のネタ。彼女とともに、kitagawaも笑った。独特の価値観を持つ彼女の思考は、純粋にkitagawaの興味を引いた。

彼女の自宅までの終電の時間は、彼女の使う路線から頭の中に入っていた。24時10分にはここを出ないとそれには間に合わなかった。左腕の時計をテーブルの下でちらりと見た。現在、24時20分。勝ちを確信した瞬間だった。

「そろそろ出よう!」

そういって席を立った。会計を済ませ、店を出る。自宅はすぐそばだ。前まで歩いていく。シャンパンルーティーン。グダがあったが、ここも笑顔で押し切った。彼女は押しに弱いタイプだ。もしここで断られても、kitagawaには切り捨てる覚悟はあった。PUAは決して迎合しない。常に失う覚悟を持ち、主体的でいるのだ。

シャンパン・セレブレーションからのバスローブルーティーン。耳舐めからの手マソ。

「ちゃんとゴムつけてくれたいいよ・・・」

kitagawaも酔っ払っていた。フニャチンだった。愚息を無理やり勃たせ、ことに及んだ。達成感のなか、シャワーを浴びた。kitagawaは潔癖だ。事のあとには必ず即座にシャワーを浴びる。必ず近藤さんを付ける。Fはさせないし、女子のも舐めない。この3つのルールを徹底したおかげで、今まで性病はゼロだ。

こうして、今夜も長い夜が幕を閉じた。

■結果
□声掛け:17件
□番ゲ:5件(8、7、6、6、8)
□即:1件(8)


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