渋谷、ナース、7。

迷う、ということは、一種の欲望からきているように思う。

ああもなりたい、こうもなりたい、こういうふうに出世したい、

という欲望から迷いがでてくる。

それを捨て去れば問題はなくなる。

——松下幸之助(日本の実業家発明家/ 1894~1989)

7月某日渋谷。

この日は、雨が降ったり止んだりの日だった。kitagawaは先日NC(Number Close:ナンパの最後に番号やLINEを聞いて放流すること)したナースとのアポだった。仕事をいつもより早めに切り上げ、22時のアポに備えた。シャワーを浴び、髪をセットする。

ふと気付いたら、テーブルの上に放置した携帯に彼女からLINEで着信が入っていた。kitagawaと会うの前の予定が延びてしまい、30分程度到着が遅れてしまうとのことだった。遅くなるのは、kitagawaにとって好都合だった。いかにも愛想が良い返信をした。PCをぼーっと眺めながら、時間が経つのを待った。

「着いたよー。どこに行けばいい??」

彼女からだ。スタバで待ち合わせようと提案した。彼女は快く了承した。ICレコーダーを準備して、足早に家を出る。準即のすべての流れを記録するためだ。先週始めてから、すでに録音したものが3件溜まっていた。

「久しぶりだね。」

かわいい顔とは相容れない、とても不思議な、あるいは———(ダサい、と表現するのはいささか語弊がある)帽子をかぶりながら、彼女は言った。彼女と会うのは、友人と二人で10日ほど前に渋谷のHubで番ゲして以来だった。格好もどことなくヘンテコだ。しかし、それでも十分に魅力的だった。

いつもの店へ向かって歩き出す。バジルとマスカルポーネのピザが美味しいあの店だ。シャンパンを選び、グラスに注ぐ。彼女から間髪入れずに、質問がどんどん飛んでくる。初めて会った時とはまるで別人のようだ。人見知りだったのか、あるいはアルコールが入っているからなのか、彼女はとても饒舌だった。スノボの話で盛り上がる。ピアノや、美術、印象派の話もした。彼女は、とても教養があった。趣味も共通するものがいくつもあった。気付くとkitagawaは純粋に彼女との会話を楽しんでいた。

彼女の終電の時間が過ぎた。勝利まであとわずかだった。

「すみません、チェックおねがいします。」

kitagawaは会計を済ませるため、財布を出した。

「ここは私に払わせて。」

思いもよらぬ行動に一瞬戸惑った。と同時に、嬉しくもあった。それは、kitagawaと過ごした時間に対する賞賛のようにも感じたからだ。好きな音楽のことを語りながら、店をあとにした。

kitagawaの家の前に到着した。グダはなかった。冷蔵庫から用意しておいたフルーツ盛りを出す。シャンパン・セレブレーション。日本酒が好きだという彼女に対して、「」を用意した。乾杯。澪とフルーツを頬張りながら、彼女は満面の笑みを浮かべた。ほどなくして、二人はベットになだれ込んだ。言葉はなかった。ゆっくり唇を重ねた。下を触りにいく。グダ。形式グダだ。kitagawaは空気を読みながら、じっくり攻める作戦へ切り替えた。腕を彼女の首の下に回し、ゆっくりと髪を撫でた。耳を舐めた。彼女から声が漏れた。鼓動が激しくなるのを感じた。スカートを脱がせ、一気に攻めた。彼女はもう、kitagawaを受け入れる準備ができているようだった。胸を吸いつつ、近藤さんを付けた。

———事後、彼女はさらに饒舌になった。友人のこと、家族のこと、元彼のこと。kitagawaは達成感や満足感、なんとも言えない感情に陶酔しながら、彼女の話を静かに聞いた。

kitagawaは決して女性に迎合しない。セクのためには付き合わない。それだけは絶対に曲げないポリシー(——あるいは美学のようなもの)だ。そんなことを考えながら、今日も長い夜が終わった。


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