六本木ピックアップ物語・前編 〜女子アナとオンリーワン中毒〜

細かく考えすぎたらその場から動けないし、

だいたいで動いているだけでは

目的地につくことはできない。

- 羽生善治(将棋棋士/ 1970~)


某日、六本木。

この日は友人の小山と六本木にあるクラブ、V2に出かける予定だった。週末は仕事も多忙になりがちだが、どうにか調整をつけて早めに切り上げ待ち合わせの場所へ向かう。

kitagawaが目的地に着く頃には、V2には隣の道路ギリギリまで長蛇の列ができていた。

「ごめん、待たせた。」

先に列に並んでいてくれた小山を見つけるなりすぐに、kitagawaはそんな言葉を発した。駆け足で近づくkitagawaに対し、彼は笑顔で手を振ってくれた。そして、がっちりと固い握手を交わした。

「きましたね。今日もやっちゃいましょうか。」

kitagawaは言った。小山とは連勝中だった。kitagawaとの連携も悪くはなかった。お互いフィーリング寄りのピックアップスタイルだが、過去の経験や理論がバックボーンに存在しているのは揺るぎない事実だった。

エレベーターで13階へ上がり、声掛けを開始する。

「やぁ。めちゃくちゃ夏めいたワンピースを着てるね。ちゃんと水あげてんの?」

7と6のセット。色鮮やかなハイビスカスのワンピースを着ていた彼女は、医療事務で社会人3年目、神奈川出身、スト値7。しばらく和んで、ナンバークローズ。小山もうまくやっているようだった。ウォーミングアップには丁度いい案件だった。間髪入れず、次をサージング開始した。

白に黒ラインのタイトなストライプのスカート、きれい目な化粧、身長は165前後、その表情には気品を漂わせていた。スト値8。迷わず声がけ。

「なに飲んでるのー?」

kitagawaは微笑みながら、彼女に語りかけた。

「ジントニックだよー。」

彼女は、笑顔で答えた。彼女とはすぐ打ち解けた。フィーリングがあった。好きな料理、スポーツ、趣味の話——どんな話をしても、表情豊かに笑ってくれた。いつしかkitagawaは彼女に吸い込まれるかのように、魅了されていた。MARCH出身、女子アナを目指していたが、現在は金融関係の仕事についている彼女は、とても聡明だった。普段レベルを合わせて女子と会話しているkitagawaも、存分に知識を出してボケれたし、それに対しても的確なツッコミを返してくれた。感動した。次回会う約束をして、番号を交換した。そのあともウイング(ピックアップでの相方の意)が居ることも忘れて、会話に没頭した。

「ちょっとトイレ行くね」

彼女が言った。彼女との空間の魔法が解けた。夢が覚めた。しばらく呆然と立ち尽くすkitagawaに小山が声をかけた。

「オンリーワン中毒か?(笑)」

kitagawaは否定した。PUAは常に失う覚悟を持たなければいけない。言葉を払拭するかのように、kitagawaは言った。

「次行こう!」

その言葉を発すると同時に、LINEの着信が入った。さっきの彼女からだ。

「さっきはいきなりトイレ行ってゴメンね(;;)今度ご飯行こーね!」

マジか・・・。kitagawaは困惑した。解けない魔法にかけられてしまった。その後、ピックアップを続けるも、どこか上の空のkitagawaがそこにはいた。このままではマズイことは、どう見ても明らかだった。

精神統一する。ルーティーン・無の境地。テキーラショットを一気に飲み干し、ピックアップをして即ること以外、何も考えない。完全なピックアップ・マシーンとなったkitagawaがそこにはいた。


続く———。


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