六本木スト〜即るということ〜

人が想像できるすべてのことは、起こりうる現実だ

— ウィリー・ガロン(物理学者)

8月某日渋谷—。

この日は翌日が平日だったため、深夜帯になると街からはどんどん人が捌けていった。kitagawaはウィングのハヤトと共に、この日の決戦の地に六本木を選んだ。ハヤトと戦う六本木の地は久しぶりだった。自然と胸の高鳴りを感じた。

いつもならタクシーだが、時間がまだ早く終電があったため渋谷から電車で六本木まで移動することにした。

渋谷から六本木は電車のアクセスが悪い。距離にすると4キロ程度だが、地下深くまで降りて地下鉄を乗り継ぎ、また階段を上って地上に出なければならない。さらに、地下鉄ホーム特有の風が、せっかくのセットした髪をいたずらに乱してくる。

しかし、メリットもある。それはタクシーと違い、行くまでの道程の中でピックアップができるという点だ。これは、何物にも代えがたい。

代々木の大江戸線ホームで、乗り換えの電車を待つ。

「すみませーん。」

ホームを歩いていると、後ろで声がした。ハヤトがソロ案件をピックアップしはじめたのだ。そう、戦いはもう始まっていた。kitagawaは純粋に嬉しかった。コンビ時に、気兼ねなくソロのピックアップができる関係性が構築されていることが。

負けじとkitagawaはホーム一帯をサージングした。美容師風のソロと、B-girlのコンビ、美容系専門学生風のコンビ、3組の案件が目に付いた。

kitagawaは美容師風のソロ案件にまず声をかけることにした。

「すみません。六本木行きたいんですけど、このホームで合ってますか?」

間接法オープナーを選択。当たり前に、合っている旨の返答が返ってくる。kitagawaは続けた。暑いですね?お一人ですか?など、イエスの法則を用いたコールドリーディングを仕掛ける。彼氏何人いるのルーティーンでネグりつつ笑いを誘う。ハヤトの様子を伺うと、まだ和んでいる感じだった。ナンバークローズしたが、時間調整のために会話を続けた。ハヤトにメールを送信し、頃合いを見て放流。

「奥に7の2人組の案件おる」

kitagawaが送った内容だ。少し離れたところで既読されるのを待っていると、ほどなくしてハヤトが笑顔で歩いてきた。ハヤトの案件は33歳、美容師。結婚考えている彼氏グダで番ゲできず、とのことだった。

ちょうど、六本木行きの電車がホームに到着した。

7の2人組と同じドアから車内に乗り込む。ハヤトが二人の隣に座り、kitagawaは席に空きがなかったため、斜め前に座った。

「どう攻めるのそこからw」

kitagawaはハヤトにメールを送信した。

「物じゃない?」「どうしよっかなぁ」

迷った末、持ち物ネグを選択した様子だった。ミリオンダラースマイル併用。オープンしたが、反応は今ひとつのようだ。kitagawaも加勢する。美容系の専門学生。18。うまく和めず。六本木駅に到着後、番ゲせずに放流。

長いエスカレーターを上り、改札をでる。ちょうど、改札前で高ストソロ案件を発見。

「六本木からの終電ってもう終わっちゃいましたよね?」

外から来た風を装い、間接法オープナーを選択。オープン。待ち合わせ系女子。これからインカレサークルの集まりがあるとのこと。地元が近い、年が近い、などの共通点を模索しつつ類似性の法則を用いて距離を縮め、和むことに成功。秋田出身の某有名女子大生の3年生、スト値8。彼女の待ち合わせ相手から連絡がきたので、ナンバークローズ。

そうこうしているうちに、ハヤトを見失う。地上への階段を彼女と一緒に上る。世間話をしつつ、できるだけ返信率を上げる作業をする。地上に出て、また会う約束を交わしつつ、それぞれの道へ歩き出した。

kitagawaはV2へ向かいながら、ハヤトと無事に合流。

「kitagawa!これ。」

ハヤトはミリオンダラースマイルを繰り出しながら、kitagawaに缶ビールを差し出してきた。kitagawa、ノーグダでオープン。暑い道中、キンキンに冷えたビールが身体中に染み渡った。

「ありがとう(笑)」

kitagawaは言った。自然と笑みがこぼれる。純粋に「今夜」を楽しもうと思った。

路上には人影がまばらだった。道中で2、3組に声掛けするもオープンせず。彼女たちは明確な目的があって路上を歩いていた。彼女たちの目的を上回る、魅力的なトーク、あるいは案を提示できていなかった。考えなければ。もっともっと丁寧に。

そんなことを考えていた矢先、ハヤトが六本木hubのパトロールを打診してきた。kitagawaはそれを了承した。hubはちょうど通り道だ。地下への階段を下り、店内をサージング。案件は?奥に6の二人組。ハヤトが声掛け。席の場所的に声がけにどうしても違和感が生じてしまう位置に、彼女たちは座っていた。案の定、片方しかオープンせず。ノー番ゲで放流。他に案件は?店内をぐるっと見回す。居ない。すぐさま地上への階段を上り、店を後にした。

「V2に入る前にガスパを覗こう。」

kitagawaは言った。気分転換に六本木ガスパニックを覗いてみる。kitagawaはV2のようにラグジュアリーで煌びやかな女子が多い場所も好きだが、ガスパのように退廃的なムードが漂う雑多な空間も嫌いではなかった。

そんなことを考えながら、ガスパに入る階段を上る。エントランスを通り抜け、サージング。女子は居ることは居るが、ピックアップ案件はほぼ0だった。しばらくハヤトと様子をみる。スタッフが目の前の卓にテキーラショットを大量に運んできた。それを無言でハヤトが2つ取り、一つをkitagawaに渡してきた。

「乾杯!」

ハヤトが言った。一気に飲み干す。ほどなくして、スタッフにハヤトが声をかけられていた。どうやら、無料で配布しているサービステキーラではなく、他の客が購入したものだったらしい。仕方なく1000円を払うことに。

「出よう」

kitagawaは言った。このままガスパにいても、可能性は見えなかった。ストに切り替えることにした。

ドンキの前を通り、コンビニ前からロアビル側へ横断歩道を渡る。途中、何件かに声掛けするもオープンせず。V2前からちょうど出てきた高スト2人組を発見。

「V2どうでしたー?」

すかさず、kitagawaが声掛け。間接法オープナー。オープン。熊本から遊びにきている。8と7のコンビ。タクって滞在するホテルまで戻るところだった。少し和んで即案件ではないと悟り、番ゲせずに放流。

「この方法で行こう。」

kitagawaは言った。ハヤトは一瞬で今日の方向性を理解したようだった。V2前に歩き出すと、すぐ次の案件が現れた。7と6のコンビ。迷わずkitagawaが先程と同様のオープナーを選択する。

「V2どうでしたー?今俺らその辺で飲んでて、どうしよっか悩んでたところだったんですよ。」

丁寧に声掛け。オープン。kitagawaの担当は、スト値7、飲食系で働くお姉さん。北区住み。恋愛遍歴引き出しルーティーン。彼氏は今まで3人。元彼とは3年付き合う。ダメ男にはまるタイプ。ハヤトの方も充分に和んでいる様子だった。アイコンタクトで、連れ出し打診。ノーグダでタクシーに乗り込む。kitagawa邸へ。

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タクシーの中で第三者話法。ノーグダで家。ハヤトが手早く音楽をセッティング。スムースにシャンパン・セレブレーションからのノーダメージメガンテ。盛り上がってきたところで、kitagawaがショッピングセパレートを仕掛ける。その間にハヤトが部屋でギラ。

時間をもたせられず、部屋に戻ることに。

「乳首舐め余裕。セクまでいけそう」

ハヤトからメールの着信が入る。

「疲れたからちょっと休もう」

そう言いながら、kitagawaが来客用のベッドをセッティング。セク体制へシフト。ダブルギラ。ハヤトが始めたのを確認して、kitagawaも攻める。ノーグダ。

「ちょっとトイレいっていい?」

今か。。。挿入し、少し動いていた矢先、彼女が言った。咳き込み、本当に具合が悪そうだったので、トイレまで一緒にいくことにした。

kitagawaはセクをして自分の肉体を気持ち良くすることがゴールではなかった。セックスの向こう側を見たいのだ。まだ絶頂には達していなかったが、kitagawaは彼女の介抱をすることに全力を尽くしたいと思ったし、そうすべきだとも思った。

水を用意し、渡す。それを勢い良く飲み干す彼女を、kitagawaはただ満足気に見ていた。

「ちょっと寝よう。」「うん。明日さ、病院に行かなきゃいけないんだ。だから、7時過ぎくらいに起こして?」「分かった。」

彼女とそんなやり取りをトイレの前で交わした。ちょうどハヤトがリビングで事を済ませた後だった。ベッドに戻り、一休みした。そして、夜が明けた。

彼女を玄関まで見送る。

「またこんど一緒にワインでも飲もうね。」

彼女が具合悪そうな顔を隠しながら、できるだけ笑顔で、明るく、そうkitagawaに言った。

「また」があるかどうかは分からないが、今日も「また」スズメの鳴き声とともにドアが閉まる音が、静かに鳴った。そして、いつもと変わらない朝がkitagawaを優しく包み込んでいった。


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