ナンパとT2と雨の降る街 〜ハヤトの苦悩〜

行為すること

これが存在することである

ー ルネ・デカルト(哲学者)


9月某日、渋谷——。

この日は台風の接近で雨がひどく降っていた。全くもって迷惑な話だった。勿論、傘は差していたが、それは申し訳程度の雨よけにしかならなかった。

お気に入りのローファーはずぶ濡れになり、ジーンズの裾の方にまで水が染み込んでいた。しかし、kitagawaは、ピックアップにおいては雨の日が嫌いではなかった。

たしかに、ストリートにおいてはその日和とは言えない。しかし、明らかにコンペティターの数は目減りし、普段混んでいて足が遠のいているクラブでも、比較的快適に過ごせる。

——kitagawaはそんな雨の日が好きだ。こうして昨日のできごとをあれこれ想起しているとき、外から聞こえてくる雨の音が、あるいは周期性をもって障害物に当たる水の音が、どこかで荒んでしまったkitagawaの心を静かに落ち着かせた。まるで、どこか鼓動にも似た心地の良いメトロノームみたいに。

ハヤトとの約束があった。

彼は最近、ピックアップの中で「」を意識していなかった。あるいは、無意識的に準即、番ゲに声掛けからのゴールを設定してしまっていた。

先日、そのことを指摘すると、すぐさま彼なりの「答え」が出た様子だった。

「kitagawa。今日は、必ず即を狙おう。俺、すべての案件に打診するわ。」

ハヤトが、自信のある笑みを浮かべながら言った。kitagawaは即座に頷いた。そしてそれは、チームとしての絶対的な勝利を確信した瞬間でもあった。

kitagawaとハヤトは、もう何年も一緒にピックアップをしていた。無言で相手の考えていることがなんとなくわかったし、即までの強固な道筋をお互い持っていた。リカバリ案や代替案を打ち出す力にも長けていた。そして、なにより、お互いを信頼していた。

「今日は楽しい日になる。」

kitagawaはそう言いながら、ハヤトと共に雨の降る夜の渋谷の街へ繰り出した。向かう先はT2だ。

この日はコンビでのピックアップではなく、もう一人の友人も同行し3人でクラブを楽しむはずだった。古くからの友人の亀梨だ。しかし、クラブに行く途中、彼は身分証を忘れていたことに気付き、一人離脱を余儀なくされた。kitagawaとハヤトは非常に残念に思った。

何か手はないかと、考えた。もう一度、ハヤトと亀梨はkitagawaの家に置いてある荷物の中を捜索しに戻った。その間、kitagawaはドンキで待つことにした。

ドンキ前。一人誰かを待っている女子を発見。スト値6。ウォーミングアップ。迷わず声をかけた。

「誰か待ってるんですか?」

サイド・アタック理論。笑顔で自然に。オープンした。彼女は福岡出身。映像系の仕事をしていて、これから女友達とatomに向かうところだった。軽く世間話をして、飲む約束をしている中で、ハヤトと亀梨が到着した。タイムリミット。ナンバークローズした。

3人でドンキでお酒を購入し、乾杯。気を取り直してT2に向かい、エントランスをくぐり抜ける。やはり、亀梨は通ることができなかった。亀梨は、残念ながらここで離脱。明日また会う約束をして、見送った。ゲスト(クラブで割引になるシステム)を受け付けで伝え、1500円を払いダンスフロアへ向かう。

店内は混雑しているといった感じでもなく、程よい混み具合をみせていた。

「飲もうか!」

ハヤトがkitagawaの肩を掴みながら言った。kitagawaは笑顔で頷いた。

バーカウンター前で、椅子に座っている2人組を発見した。7と5のペア。即座に7に声がけした。

「なに休んでるの?まだ夜は長いよ。」

彼女は、微笑みながらこちらを見つめた。ストライプの体のラインがはっきりわかるタイトスカート、白いトップス、カーディガン。額が少しだけ広く、大きな目。どことなく大島優子に似ていた。スト値7。

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和みを進めた。彼氏に怒られないのルーティーン。去年別れて、1年くらい居ない。kitagawaがボケると、味のあるツッコミで返してくる。だんだんと、ツッコミも含めてkitagawaの体を触る回数が増えてきた。笑顔が素敵だった。彼女は頭の回転が早く、純粋に会話を楽しめた。徐々に魅了されていたの果たして彼女か、あるいはkitagawaか。ハヤトの動向も気になっていた。

続く——。


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