2015年10月04日 一覧

恋のフライト・アテンダント 序章 〜魔法にかけられて〜

私は、敵を倒した者より、自分の欲望を克服した者の方を、より勇者と見る。自らに勝つことこそ、最も難しい勝利だからだ。

- アリストテレス


ジャケットや薄手のニットを羽織ると、ちょうど良い心地よさを感じれるようになった、某日———kitagawaはスクランブル交差点を一人歩いていた。ある女性との待ち合わせ場所に向かうためだ。

「お待たせー」

彼女はハチ公前の交番のところで、携帯を握りしめながら流れ行く人混みをただぼんやりと眺めていた。kitagawaが声をかけると、彼女はすぐに笑顔になった。

白いシフォンブラウス、茶色と黒のストライプのスカート、前髪が綺麗に整髪料で整えられ、長い黒髪に挟まれた小さな顔には大きな瞳がキラキラと輝いていた。

彼女とは、東京湾納涼船に乗船したときに知り合った。憧れの職業、あるいは将来なりたい職業でもトップに名を連ねる”CA”。それが彼女の職業だった。


参照:東京湾納涼船ナンパ 上巻〜船上のピックアップアーティスト〜

※番ゲまでの流れを以前のエントリーに記載させて頂いております。


 

kitagawaは乗船時に、他の案件を持ち帰っていた。しかし、彼女の存在がいつまでも心の中で、ゆらゆらと消えない炎のように動いていた。

納涼船のあと、ディズニーが好きな彼女に対してこんなメッセージのやり取りをしていた。

「あと数時間で魔法が解けちゃうから、気をつけて帰ってねお姫さま。笑」

「ガラスの靴落として帰るね。笑」

「やばいよそれ〜国中探さなきゃ。笑」

毎日とまではいかずとも、定期的にメールのやり取りはされていった。いつしか、kitagawaは彼女に魅了されていることに気付いた。

 

19:30—

そんなことをあれこれ考えながら、やっと今日、彼女と会うことができた。様子を伺いながら、お勧めのイタリアンに案内。ワインのボトルと、お決まりのバーニャカウダを注文しながら、彼女といろいろな話をした。自分史ルーティーン恋愛遍歴引き出しルーティーンを軸としてトークを構築する。学生時代のこと、元カレのこと。彼女はその端正な見かけによらず、男性関係に驚くほど恵まれていなかった。

理想像演出法。自分が演じなければいけない、彼女にとっての理想像は決まった。知的で、ユーモアがあり、彼女を包み込んでくれるような頼り甲斐のある存在。それを意識して会話を進めていった。

彼女の終電は22時53分。彼女の最寄りを引き出し、そこまでの時間をトイレで確認した。北風と太陽理論。ワインのボトルが空いた。時計の針は既に22時30分を回っていた。

kitagawaの魔法は0時で解けてしまうのか———。

 

続く。