本日のエントリーは前回の
こちらの続編です。よろしければ、そちらからまずはご覧頂けますと幸いです。
間違った知識には注意せよ。それは無知よりも危険である。
— バーナード・ショー(作家)
Chapter 2 列
小山と合流し、明治通りからタクシーを拾う。首都高の下を通り、六本木通りを抜けると見慣れた街並みが広がっていた。color(六本木にあるクラブ)の前を通り過ぎ少し走ると、地下鉄麻布十番駅の7番出口付近に着いた。
「運転手さん、この辺で大丈夫です。」
kitagawaがドライバーの男性にそう告げると、タクシーは左に寄りガードレールのすぐ脇に停まった。支払いを済ませ降車する。場所をいまいち把握していなかったため、少し小山とキョロキョロしていると前から2人組の女性がこちらに向かって歩いてきた。
「すみませーん。エルってクラブどこか分かります?」
小山がすかさずオープナーを投げる。定番の道聞きだ。彼はもう暖まっていた。
「あちらですよー。楽しんでください。」
女性はにこやかに、小山の問いかけに応じた。様子を観察していると、アイコンタクトを取るまでもなく、これ以上追う案件ではないのは明白だった。小山もkitagawaも、踵を返し女子が示した方へ向かった。
その場所はすぐにわかった。店の前には、すでに列ができていた。
「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくる。」
kitagawaは限界だった。万全の状態でクラブに入りたかったため、先にどこかで用を足してくるつもりだったが、それらしき場所は近くにはなそうだ。駅のトイレに行くしかなかった。麻布十番の7番出口から中に入ると、「これでもか」というくらい階段やらエスカレーターやらで下に降りなければいけなかった。これは疲れてクラブから朝帰宅する人にとっては、まさに地獄だ。
きっとこれが分かっている女性は、タクシーで帰りたいはずだ。これは持ち出し打診のチェックポイントの一つであろう。そんなことを考えながら改札前を通り過ぎ、トイレへ向かう。本当に遠すぎる。
急いで小山の元へ戻る。彼は出口付近でkitagawaを待っていてくれた。
「ごめん、待たせた。じゃ、並ぼうか。」
kitagawaは言った。
列を見ると中の様子がある程度予測できるが、今現在列に並んでいる女性は決してスト高とは言えない子たちばかりだった。
大丈夫なのか?———kitagawaの脳裏に一抹の不安がよぎった。尋ねると、小山も同じ思いだった。colorという選択肢も無くはなかった。この日はV2が改装工事のため、営業をしていなかったからだ。
行動を起こそうとした矢先、目の前から6と7のコンビが歩いてきた。すかさず、オープナーを投げる。小山がすぐさまサポートに入る。この辺の動きはさすがに早い。
列にうまく一緒に並びつつ、オープン。kitagawaの担当はスト値7の女性。彼女は近くで働くIT系のOLだった。持ち物をネグ。まずはバッグにフォーカスする。
服装はもちろんだが、バッグや財布はその女性の個性が色濃く出やすい。例えば、クロエを選ぶ女性と、miu miuを選ぶ女性、サマンサを選ぶ女性では全くタイプが異なる、ということだ。そこで「どんなバックボーンを持つ女性か」ある程度推察し、適切な会話を展開していくのがセオリーだ。
食いつきはまずまず、といったところだ。
—続く—